LINE BRAINは、2019年6月に開催された「LINE CONFERENCE 2019」で発表された新事業の一つで、LINEが多くの実績をもつB2Cサービスで培ってきたAI技術とノウハウを法人向けに販売するAI技術の総称です。現在は、「チャットボット」「OCR」「音声認識」「音声合成」「画像認識」などの製品を提供しています。
LINE BRAIN事業では、企業とAIの距離を近づけ、社会にWOWを届けること、そしてその領域でアジアNO.1となることを目指しています。
今回はLINE BRAIN事業の立ち上げから携わっているLINE BRAIN室の副室長、佐々木 励(以下、レイ)に詳しい話を聞きました。
LINE株式会社 LINE BRAIN室 副室長 佐々木 励
主に事業企画・プロダクト企画・チームビルディングに携わる
LINE BRAIN 誕生のきっかけはLINEメッセージから
ーーLINE BRAINが誕生した背景を聞かせてください。
当時Clova(LINEが開発したAIアシスタント)のB2C事業に従事していましたが、ある日舛田さん(LINEの取締役CSMO)からLINEメッセージがきて、「うちは優れたAI技術を持っているので、それをB2Bに展開できないか?何かちょっと考えみて」と話が来たことがきっかけです。(笑)
そのLINEメッセージがきっかけとなり、「LINEはデジタルネイティブ企業の素養をもって成長してきた会社なので、B2B事業のみに注力している会社に比べて、柔軟性とスピードに優れている。ならば、それを活かした事業をやるべきだ!」と思い、構想を練っていきました。
実はあまり知られていないかもしれませんが、LINEは日本でも数少ない、AI技術に投資している会社なんです。米国を中心としたグローバルプラットフォーマーとして働いていた前職では、どうしても日本を含むアジアの優先度が下がってしまう傾向がありました。その経験から、アジアのプラットフォーマーであるLINEがAI技術に更に投資して、社会に還元していくべきではないか、と感じました。
また、LINEはユーザー体験(WOW)を大切にしている会社なので、ユーザーにとって使いやすさを追求したアウトプットは不可欠です。
従来のB2B向けITソリューションは、「パッケージを導入して業務プロセスを効率化しましょう!」というコンサルティングが主流ですが、実用フェーズに入ると実際に扱う人の中には「なぜこんな使いづらいシステムを使わないといけないんだ」と不満に思う方も少なくないんです。
そういった背景もあり、得意領域に特化するクラウドサービスビジネスが支持されている現在、大きなパッケージシステムを提供するより、必要な機能だけをクラウドで提供する方が市場ニーズにフィットするのではと考えました。また、そうした取り組みによって、内向きになりがちな日本のエンタープライズITをオープンにしていくことにも貢献できると思っています。

LINE BRAIN の名前・イメージカラー(青)へのこだわり
ーー「LINE BRAIN」という名前はレイさんが発案者だとお伺いしました。名前には何かイメージされているものはあるのですか?
LINE BRAINは、「チャットボット」「OCR」「音声認識」「音声合成」「画像認識」など、AIの要素技術を使ったAIサービスです。AIというキーワードはわかりやすさはあるのですが、バズワード化しており、名前を決める上ではそういった単純なものではなく、我々の持っている技術力の高さを表現したいと考えました。現在のAIブームを後押ししている深層学習(ディープラーニング)は、脳の神経細胞の構造を参考にして作られており、自然と「脳=BRAIN」というキーワードが出てきました。 LINE BRAINロゴの『B』も神経細胞の形をベースに作られています。
ちなみに、LINE BRAINのイメージカラーである青にも意味があるんです。LINEは想像以上に優れた技術を持っているということが世の中的に認知されておらず、そこがブランディング上の大きな課題であると認識していました。
その技術力を色で表すには何がいいのか? 社内のブランディングチームと一緒に色彩感情などを調査していくと、「先進的」「先鋭的」「革新的」なイメージが強い青が、とてもフィットしました。
LINEといえば親しみやすい緑色のイメージが強いですが、そのLINEの緑の中に青さがあることで尖った印象を与えることができると感じています。我々は技術集団であり、LINE BRAINがテクノロジー的にも優れているということを表現したいと考えました。
LINE BRAINがもたらす付加価値とは?
ーー さて、ここからはプロダクトをリリースした後の話をお伺いします。LINEが開発したAI技術だから、LINEの既存サービスと組み合わせることで新しいLINEの価値が生まれるのでは、といった期待を持つ方も多いと思います。LINE BRAINがもたらす付加価値とは何でしょうか?
1つ目は『LINEが持っている既存サービスとの連携』 です。
たとえば、LINE BRAIN CHATBOTにはLINEメッセンジャーやLINE WORKS(ビジネス向けのソーシャルツール)と連携しやすい機能が備わっています。今後は、我々が持っている複数のAI技術の組み合わせにより、LINEの各サービスがさらに使いやすいものになっていくと思います。
最近の事例をあげると LINEユーザーからの問い合わせサポートを行っているLINE公式アカウント「かんたんヘルプ」には友達数が100万人以上いるのですが、そこにもLINE BRAINのチャットボットが実装されています。
100万人を超えるユーザーが利用し、さまざまな問い合わせが集まる「かんたんヘルプ」で、ユーザーのニーズに応えられるチャットボットエンジンを実現できれば、同じようにさまざまな問い合わせがくる企業様にも提供できるエンジンになると考え開発・実装しました。
その結果、正答率は他社エンジンを上回る90%以上を達成し、顧客満足度も向上するなど大きな成果が出ています。外部にも自信を持って提供できるチャットボットエンジンを開発できたと考えています。
2つ目は『最大級のB2CプラットフォームであるLINEで洗練されたAI技術を、他の企業様に提供できる』ことです。
AIの精度を向上させるには、膨大なデータが必要です。たとえば、LINEのCONOMI(グルメアプリ)では、ユーザー体験向上の一環として、レストランのレシートを撮影するだけで店名やメニューが自動入力されるなど、ユーザーが簡単にグルメ記録を投稿できる機能があります。これにはLINE BRAINのOCR技術が活用されており、ユーザーがこの機能を継続的に利用することで、OCR技術も向上していきます。
このように、LINEではAIの精度が洗練される環境があることから、業界最高水準のAI技術を外部企業様に提供することができます。また、LINEのB2BサービスにAIサービスが加わったことで、企業様のさまざまご要望に幅広くお応えすることができるようになりました。

LINE BRAIN で実現しようとしていること
ーーLINE BRAINの今後のビジョンについて教えてください。
アジアNO.1の技術力を発揮できる領域で、社会に貢献することです。
まだデジタル化されていない情報(音声・画像・テキストなど)を活用できるようにすることが、我々のAI技術で取り組むべき課題と考えています。人に負担をかけていたデジタル化作業を圧倒的に効率化してコストダウンを実現できますし、圧倒的な効率化の先には結果的に新たな価値が生まれるはずです。
AI技術が世の中に普及していく中で、まだ想像していないような新しいユースケースが生まれてくる思います。スマホのようにユーザーたくさん使えるようになったことで、色々なユースケースが生まれたことと同じです。
企業様には新しいアイデアを創造し、実現いただけるよう、共に歩んでいきたいと考えています。